新サービス残業根絶通達

 


ただ働き解消 国が電話相談

無料窓口やアドバイザー配置へ

厚労省が概算要求

しんぶん赤旗2003年9月14日


 サービス残業問題で厚生労働省は、来年度予算の概算要求に、全国7ブロックでの無料電話相談窓口の開設、47都道府県の労働局に専任のアドバイザーを配置することを、初めて盛り込みました。「賃金不払残業(サービス残業=ただ働き)の解消に向けた取組の推進」(1億6千万円)です。

 厚労省は、2001年4月の「サービス残業根絶通達」につづき、今年5月には「サービス残業解消対策」のための「要綱」と「指針」を発表。使用者による労働時間の適正な把握をはじめ、労使が協力し、職場風土の改革やチェック体制の整備などを通じて違法状態の解消に取り組むとしています。

 厚労省は、全国7ブロック(北海道・東北、関東甲信越、東海北陸、近畿、中国、四国、九州・沖縄)で休日を含めたキャンペーン期間中にフリーダイヤルで無料電話相談をおこなうとしています。非常勤職員として、サービス残業問題専任のアドバイザーを全国47都道府県の労働局に常駐させます。


評価したい

日本共産党国会議員団厚生労働部会長・小沢和秋衆院議員の話 サービス残業の是正を求める労働者や家族からの申告はこの数年、全国で増えつづけており、これにこたえようとするもので評価したい。サービス残業は違法な企業犯罪だが、事実を告発できれば是正できる。予算要求が実現し、運動がいっそう発展するよう取り組んでいきたい。

サービス残業問題

共産党、241回質問

 日本共産党の井上美代参院議員は2001年10月18日の厚生労働委員会で、「サービス残業110番など、実態もわかる、厚労省も努力していると見えるようなことをしていただきたい」と要求。南野知惠子厚労副大臣(当時)は、「サービス残業の解消については、労働基準行政の中でも重要な課題の一つだ」と答弁しています。

 日本共産党は、1976年5月に沓脱タケ子参院議員(当時)が予算委員会で「サービス残業」という言葉を初めて使って質問。以来、衆参合わせて通算241回にわたり、サービス残業根絶を求めて質問してきました。サービス残業をめぐる国会での全質問(395回)のうち、日本共産党の質問は6割を超えています。


サービス残業根絶ぜひ

新規雇用や余暇拡大に

党福岡県委員会が労働局と懇談

仁比比例候補、つの参院福岡候補ら強調


 日本共産党福岡県委員会は7月11日、厚生労働省が出した不払い残業・ただ働き(サービス残業)の違法をただす一連の通達に関して、福岡労働局(福岡市)と懇談しました。サービス残業の根絶や過重な長時間労働の防止などを具体的にどうすすめるべきか、率直な意見を交わしました。

 懇談には、日本共産党から仁比そうへい衆院比例候補、つの豊臣参院福岡選挙区候補、原田祥昌・党県労働部長と労働部員ら8人が参加。

 厚生労働省は、「サービス残業撤廃通達」(2001年4月)以降もサービス残業があとを絶たないため、新通達「サービス残業解消対策指針しを出しています。

 福岡労働局は、新通達にもとづく11月の「重点監督月間キャンペーン」で、「効果のあるものを検討中」と答え、「過重労働防止通達」(2002年2月)の徹底をはかっているとも説明しました。

 仁比氏は「サービス残業をなくせば、161万人の新規雇用も余暇も拡大でき、経済効果も発揮される。これらは、労働組合や就職難の若者、家族にとって大事な問題だ」と強調しました。

 つの氏は、福岡市在住者から寄せられた、過労死寸前の夫に関する手紙を紹介。労働局側は、これにたいする改善策の方向をしめし、「情報を頂くとありがたい」とのべました。

 ほかの参加者からは、過重労働の対策、労働災害の大きな要因となっている人減らしや休憩時間の削減の問題などを解決するため、労働局側の考えを聞きました。(しんぶん赤旗九州・沖縄面)


2003年7月5日「しんぶん赤旗」

「サービス残業」なくせば 160万人雇用できる

第一生命経済研

GDP2.5%上昇


図

 「サービス残業」をなくせば160万人の雇用が創出し、失業者減・所得増・余暇時間拡大で個人消費が増え、実質国内総生産(実質GDP)を2・5%押し上げる──。こんな試算結果が、第一生命経済研究所がこのほど発表した経済調査部・門倉貴史副主任研究員のリポート「不況下で増加するサービス残業」で分かりました。

 リポートは、労働者本人の申告をベースにした「労働力調査」(総務省)の労働時間と、事業所の賃金台帳をベースにした「毎月勤労統計調査」(厚生労働省)の労働時間の差を、タダ働きの「サービス残業」時間と推定して調査。最近の五年間(1998年─2002年)で増加テンポが加速していることに注目しています。

 この「サービス残業」をなくし、新規雇用に振り替えた場合の雇用創出効果を試算したところ、次のような結果がでました。

 (1)全産業で161・6万人の常用雇用者が生み出される、(2)このため、完全失業率は現在の水準(三、四、五の各月とも5・4%。五月の完全失業者数は375万人)を2・4ポイント低下させる、(3)雇用環境の改善・「サービス残業」時間の削減は個人消費の回復につながる(実質雇用者報酬が3・8%増加する効果によってプラス2・7ポイント、「サービス残業」時間の削減による余暇時間の増大でプラス2・4ポイント、合計で5・1ポイント上昇)──など。

 同時にリポートは、「サービス残業」削減とそれによる雇用拡大は企業側には「収益の圧迫要因とな」り、実質設備投資には2・3%の下押し圧力がかかると分析しています。ただそうであっても、「個人消費の増加分と設備投資の減少分を合わせて、実質GDP全体に対する効果をみると、ネット(正味)ではプラス2・5%の実質GDPの押し上げ効果が期待できる」と、リポートは結論づけています。


「長時間残業をなくすチャンス」

厚生労働省通達の活用を

九州・沖縄事務所がミニパンフを作成


 日本共産党衆議院比例九州・沖縄ブロック事務所は、7月号外で「職場から不払い残業と長時間残業をなくそう」ミニパンフを発行しました。

 厚生労働省は、一昨年4月の「サービス残業撤廃通達」に続き、サービス残業(ただ働き)があとをたたないため、今年5月23日には、「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」(新指針)をだしました。

 また、昨年2月には、月45時間を超える残業は労働者に健康障害や過労死を引き起こすおそれがあるとし、「過重労働による健康障害防止のための総合対策」をだし、長時間残業をおさえるよう求めています。

 パンフでは、「サービス残業」は犯罪行為と断罪。通達や新指針では、労働時間の把握・管理は労基法上の「使用者の責務」とし、原則として始業・終業時刻をタイムカードなどで記録することや、「自己申告制」の場合でも、実際の残業時間を申告しても「不利益な扱い」がないなど規制を具体化していると解説。

 職場で労働者が、(1)通達を使い職場の総点検活動を行う、(2)自らの残業を記録する「残業日誌」運動をすすめる、(3)労働基準監督署への「申告」活動をするなど、運動をよびかけています。

 那覇市議会では渡久地修市議が、新指針を使い市職員のサービス残業問題を質問。翁長市長から「地方公共団体として遵守することは当然の責務」と答弁させました。


九州・沖縄民報 2003年7月号外

日本共産党は見解と比例予定候補者を発表しました。
日本共産党衆議院議員九州・沖縄ブロック事務所

【事務所】福岡市中央区薬院3−13−12 電話092(526)1933
【沖縄分室】那覇市前島3−1−17 電話098(862)7521


毎日のお仕事ご苦労様です

職場から不払い残業と長時間残業をなくそう

日本共産党


  「過労死」の大きな要因となっている、サービス残業(不払い残業・ただ働き)や長時間残業……。
  厚生労働省から、昨年2月に過重労働を防止する通達と、今年5月23日、2度目のサービス残業撤廃の通達がだされました。
  日本共産党は、すべての職場で2つの通達を活用し、長時間残業をなくすことを心からよびかけます。


日本共産党の追及と

労働者の告発が企業の違法をただして


サービス残業81億円割増賃金支払わす

  厚生労働省が一昨年出した通達を活用し、労働者やその家族が労働基準監督署へサービス残業(ただ働き)の告発で是正させた割増賃金が1年半で81億円に。九州・沖縄でも、39企業から2億1千万円支払われました。
  日本共産党は小沢和秋衆院議員らが、国会で日立や大銀行など、くり返しサービス残業問題を取り上げ、改善へ大きな役割を発揮してきました。

トヨタのライン止めた日本共産党の質問

 「夫の帰りは、平成12年ごろからいつも真夜中。残業時間は年間1500時間。いつ倒れてもおかしくない状態が続いている。何とか助けてほしい」―今年1月、トヨタ自動車の実態を告発した日本共産党山口富男議員の質問に、小泉首相も「異常だ」と答弁。トヨタ自動車は質問の翌日緊急集会を開催し、6日後にはラインを止めてサービス残業の是正を労働者に徹底しました。

「サービス残業解消」が野党共同提案に

 日本共産党、民主党、自由党、社民党の野党四党は、昨年11月には補正予算編成要求で、今年3月には政府予算の組替要求で共同提案しました。


「サービス残業」は犯罪行為

――「通達」の5つのポイント


 残業代を払わず働かせるサービス残業は労働基準法違反です。2001年4月6日、この違法をただすため厚生労働省がだしたのが、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」(基発339号通達=「サービス残業撤廃通達」以下、一昨年の通達)です。
 この「撤廃通達」以降もただ働きがあとをたたないということで、今年5月23日、「サービス残業解消対策指針」(以下、新通達)が出されました。
 「厚労相の不払い残業一掃は本気」(労働新聞)です。


ポイント(1)労働時間の把握・管理は労基法上の「使用者の責務」

 一昨年の通達で「労働基準法上、使用者には、労働時間を適切に管理する責務がある」ことが示されたのにとどまらず、新通達では、労働組合もサービス残業が行われないよう本社、事業場を問わずチェック機能を発揮して努力することや、さらに労使で構成する委員会を設置し、実態の把握、具体策の検討と実施など労使の協力体制を整備するよう求められています。

新通達では
労働時間を適正に把握するための責任体制を明確にし、チェック体制の整備を具体化
(1)複数の者を管理責任者にしてダブルチェックを行う。
(2)相談窓口を設置し、企業トップが直接情報を把握できるような投書箱や専用電子メールアドレスを設ける。
(3)労組も相談窓口を設置する。

ポイント(2)原則として始業・終業時刻をタイムカードなどで記録

  一昨年の通達は、使用者が労働者の日々の始業・終業時刻を確認し記録すること。この場合、改ざんの防止へ、「該当労働者からも併せて確認することが望ましい」としています。
  新通達でも、タイムカードやICカードなど客観的な記録を基礎に記録するとして、「自己申告制によるのはやむを得ない場合に限られ」ます。

ポイント(3)「自己申告制」への規制を具体化

   「残業代の申請は上司の許可が必要」「予算枠は月20時間以内」などの規制や、残業代を請求すると、昇進や賃金査定に不利になるなど、労働者は請求したくてもできず、ただ働きをさせられているのが現状でした。
  一昨年の通達でも、労働時間の管理を自己申告制で行わざるを得ない場合の規制を、次のように具体的にしています。

自己申告制への使用者の規制
(1)実際の残業時間を申告しても「不利益な扱い」がないことを説明する。
(2)申告が実労働時間と合っているか定期的に実態調査をする。労働者や労働組合から、同様の指摘があった場合も、実態調査を行う。
(3)残業時間の申告に上限や目安を設けたり、残業手当の定額支払制など、適正な申告をさまたげる措置はとらない。
(4)労働時間の記録を三年間保存する。

ポイント(4)通達を集中的に周知徹底する

  11月を「賃金不払残業解消キャンペーン月間」とし、労使の主体的な取り組みを促す広報活動を展開する予定。サービス残業の事例を取りまとめ公表する。

ポイント(5)悪質なケースには司法処分も

  6月、11月をサービス残業に対する重点監督月間に設定し、本社レベルでサービス残業排除の対策を行っているにもかかわらず問題のある事業場に対し、労働組合からの聴取により実態把握に努め、悪質な場合は司法処分を科すとしています。


月45時間以上の時間外労働のときは

「過重労働防止通達」の活用を


  2002年2月、厚生労働省は「過重労働による健康障害防止のための総合対策について」(過重労働防止通達)という通達をだしました。
  月45時間以上の時間外労働を行うと健康障害のリスクが高くなるとして、労働基準監督署の指導権限を次のように定めています。

【時間外労働が月45時間をこえたら】
(1)残業協定(36協定)の限度基準(月45時間)を超える届け出を出した事業主に、時間を最小限とするように指導することと、残業協定で時間外労働が月45時間以上認められていても、月45時間以下とするように指導できる。
(2)月45時間を超える時間外労働が行われているおそれがある事業場に対して監督指導・集団指導ができる。
(3)月45時間以上の時間外労働が認められる場合は、事業者に時間外労働の削減の指導や、産業医の助言指導を受けるように指導できる。
【時間外労働が月100時間または2〜6ヵ月間の月平均が80時間をこえたら】
(4)(3)に加えて、産業医が必要と認める場合は、必要な労働者に対する臨時の健康診断の実施と、その結果に基づき必要な場合は事後措置(医師が、就業制限や休業を求める)を行うよう指導できる。
(5)過重労働による業務上の疾病を発生させた事業場にたいして、原因究明・再発防止の指導ができ、労働基準関係法令違反が認められる場合は、「司法処分も含めて厳正に対処する」。
今年7月にはこの通達の徹底がはかられます。

サービス残業撤廃通達、過重労働防止通達

2つの通達を徹底して活用しよう


(1)通達を使って職場の総点検活動を行う

  労働組合がある場合は、2つの通達を反映した労働協約を結ぶよう努力します。
  組合のない場合は、通達を使った運動を通じて労働組合をつくりましょう。

(2)労働者が自らの残業を記録する「残業日誌」運動をすすめる

  同じ職場の労働者で相互につけあえば、複数で残業実態を証明することができます。過労で倒れた場合も相互に証明し合うことにより、労災認定をかちとることにも役立ちます。

●沖電気の設計技術者Sさんは、2年前にさかのぼって978時間分、約250万円の未払残業代を払わせました。パソコンに出退勤時間を日々記録していたのが決め手に。

(3)労働基準監督署への「申告」活動をする

  ただ働き一人でも申告(法違反の事実を通報)はできます。家族からの訴えも労働者と同等の扱いになります。
  監督署に行けない時は、ファクスや電話でも受け付けられます。実際の残業の実態と証明(残業日誌)や未払いとされた残業代の記録(給与明細書)などが最低必要です。誰が申告したのかは、秘密が守られます。

●三菱重工では、夫の帰宅時間を記録していた妻の訴えを労基署がとりあげました。日本共産党の国会質問に、厚労省は家族の情報提供でも「監督指導を実施する」と答弁。

ご意見・ご感想は次の各県委員会へお寄せください

福岡 092(411)5131 佐賀 0952(32)0391 長崎 095(849)6481
熊本 096(322)2700 大分 097(558)0652 宮崎 0985(27)6666
鹿児島 099(251)7333 沖縄 098(862)6232  

「しんぶん赤旗」をお読みください
●日刊紙月2900円●日曜版(週一回)月800円


サービス残業根絶へ

日本共産党が学習会


 日本共産党国会議員団厚生労働部会は6月18日、厚生労働省が発表した「サービス残業解消対策指針」「過重労働防止通達」についての学習会を衆院議員会館内で開き、一都三県の党組織などから約50人が参加しました。

 部会長の小沢和秋衆院議員が「労働基準法改悪案の有期雇用と裁量労働制の拡大という重大問題を撤回させるために全力を尽くしたい。同時に、サービス残業根絶に向け、二つの通達を生かして大きな運動を起こしたい」とあいさつしました。

 厚生労働省労働基準局の担当官は、「サービス残業解消対策指針」は、賃金不払い労働を行わない企業にしていくために労使が主体的にとりくむ内容を明らかにしたものだと説明。「過重労働防止通達」は、医学的知見をもとに時間外労働と健康障害の関係について具体的数値を示したことに意義があるとしました。

 サービス残業を生む労働時間の自己申告制や人員不足の問題などについて質問が出されました。

 参加者からは、「始業・終業時刻の記録が義務づけられたが、待ち時間は労働時間の範囲外とするなどの攻撃が強まっている。生の声をつきつけて、是正を求めたい」(造船大手)、「新しい指針は運動の成果だと実感した。サービス残業を広げる労働基準法改悪案の廃案をめざしてがんばりたい」(東京・大田区)などの意見が相次ぎました。(しんぶん赤旗)


厚労省

サービス残業解消へ指針

労働時間管理 “システム整備を”


 サービス残業(ただ働き)解消に向け、厚生労働省は5月23日、総合対策要綱と指針を発表し、各都道府県労働局長あてに送付しました。

 一昨年4月の厚労省通達以降、サービス残業にメスが入る一方でただ働きが依然として後を絶たず、サービス残業が行われない企業にしていくためには、使用者が労働時間の適正な把握に努めるにとどまらず、職場風土の改革やチェック体制の整備を通じて労働時間管理の適正化をはかる必要があると強調しています。事業場ごとに労働時間の管理責任者を明確にし、実態把握や改善へ労使の協力を求めるなど、踏み込んだ内容も盛り込んでいます。

 指針は、使用者に求められる役割として、労働基準法を順守するためには労働時間を適正に管理する責務があると指摘。同時に、労働組合も、サービス残業が行われないよう本社、事業場を問わずチェック機能を発揮して努力することや、さらに労使で構成する委員会を設置し、実態の把握、具体策の検討と実施など労使の協力体制を整備するよう求めています。

 労使がとりくむべき事項としては、労働時間管理を行うシステムの整備をあげ、(1)複数の者を管理責任者にしてダブルチェックを行う(2)相談窓口を設置し、企業トップが直接情報を把握できるような投書箱や専用電子メールアドレスを設ける(3)労組も相談窓口を設置する─を要望しています。(しんぶん赤旗より)


賃金不払残業総合対策要綱

2003年5月23日 厚生労働省

1 趣旨

 賃金不払残業(所定労働時間外に労働時間の一部又は全部に対して所定の賃金又は割増賃金を支払うことなく労働を行わせること。以下同じ。)は、労働基準法に違反する、あってはならないものであり、その解消を図るために、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」(平成13年4月6日付け基発第339号。以下「労働時間適正把握基準」という。)を発出し、使用者に適正に労働時間を管理する責務があることを改めて明らかにするとともに、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置等を具体的に示したところであり、厚生労働省としても、その遵守徹底に努めてきたところである。

 しかしながら、現状をみると、未だ労働時間の把握に係る自己申告制(労働者が自己の労働時間を自主的に申告することにより労働時間を把握するもの。以下同じ。)の不適正な運用など使用者が適正に労働時間を管理していないことを原因とする割増賃金の不払いなどの状況もみられるところである。
 このため、事業場における賃金不払残業の実態を最もよく知る立場にある労使に対して主体的な取組を促すとともに、これまでの厚生労働省による対応をさらに強化することにより、適正な労働時間の管理を一層徹底するとともに、賃金不払残業の解消を図ることとする。

2 「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」の策定

 適正に労働時間を管理するために労使関係者が講ずべき事項を盛り込んだ「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」を策定し、企業の本社と労働組合等の主体的取組を促すとともに、労働相談、集団指導、監督指導等あらゆる機会を通じて、使用者、労働者等に幅広く周知を図る。

3 「賃金不払残業解消キャンペーン月間」の実施

 「賃金不払残業解消キャンペーン月間」を設定し、賃金不払残業の解消と適正な労働時間の管理に向けたキャンペーン活動を実施し、労使の主体的取組を促す。

4 都道府県レベルでの労使当事者の意識改革の推進

 地域産業労働懇談会など都道府県単位で労使の参集を得る場を活用し、労働時間の管理の適正化の周知徹底と気運の醸成を図る。

5 的確な監督指導等の実施と「賃金不払残業重点監督月間」の設定

(1)的確な監督指導等の実施

 本省、都道府県労働局、労働基準監督署が一体となって労働時間適正把握基準の周知徹底を行うとともに、的確な監督指導を実施し、特に法違反が認められかつ重大悪質な事案については、司法処分を含め厳正に対処する。

  本社等において各部署に対して適正な労働時間の管理について一定の指示等を行っているにもかかわらず、各部署において賃金不払残業の疑いがある場合には、監督指導時に、必要に応じ、労働組合等からも事情を聴き、その実態を十分に把握した上で、改善指導を行う。

(2)「賃金不払残業重点監督月間」の設定

  「賃金不払残業重点監督月間」を設定し、賃金不払残業に係る重点監督を実施する。
 また、上記3に掲げる「賃金不払残業解消キャンペーン月間」においても、その実施に合わせて、重点監督を実施する。

6 賃金不払残業に係る事例の取りまとめ

 賃金不払残業に係る今後の監督指導の状況を踏まえつつ、必要に応じて、賃金不払残業についての送検事例、是正事例等を収集・整理の上、取りまとめて公表する。

 

賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針

2003年5月23日 厚生労働省

1 趣旨

 賃金不払残業(所定労働時間外に労働時間の一部又は全部に対して所定の賃金又は割増賃金を支払うことなく労働を行わせること。以下同じ。)は、労働基準法に違反する、あってはならないものである。

 このような賃金不払残業の解消を図るためには、事業場において適正に労働時間が把握される必要があり、こうした観点から、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき基準」(平成13年4月6日付け基発第339号。以下「労働時間適正把握基準」という。)を策定し、使用者に労働時問を管理する責務があることを改めて明らかにするとともに、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置等を具体的に明らかにしたところである。

 しかしながら、賃金不払残業が行われることのない企業にしていくためには、単に使用者が労働時間の適正な把握に努めるに止まらず、職場風土の改革、適正な労働時間の管理を行うためのシステムの整備、責任体制の明確化とチェック体制の整備等を通じて、労働時間の管理の適正化を図る必要があり、このような点に関する労使の主体的な取組を通じて、初めて賃金不払残業の解消が図られるものと考えられる。

 このため、本指針においては、労働時間適正把握基準において示された労働時間の適正な把握めために使用者が講ずべき措置等に加え、各企業において労使が各事業場における労働時間の管理の適正化と賃金不払残業の解消のために講ずべき事項を示し、企業の本社と労働組合等が一体となっての企業全体としての主体的取組に資することとするものである。

2 労使に求められる役割

(1)労使の主体的取組

 労使は、事業場内において賃金不払残業の解消の実態を最もよく知るべき立場にあり、各々が果たすべき役割を十分に認識するとともに、労働時間の管理の適正化と賃金不払残業の解消のために主体的に取り組むことが求められるものである

 また、グループ企業などにおいても、このような取組を行うことにより、賃金不払残業の解消の効果が期待できる。

(2)使用者に求められる役割

 労働基準法は、労働時間、休日、深夜業等について使用者の遵守すべき基準を規定しており、これを遵守するためには、使用者は、労働時間を適正に把握する必要があることなどから、労働時間を適正に管理する責務を有していることは明らかである。したがって、使用者にあっては、賃金不払残業を起こすことのないよう適正に労働時間を管理しなければならない。

(3)労働組合に求められる役割

 一方、労働組合は、時間外・休日労働協定(36協定)の締結当事者の立場に立つものである。したがって、賃金不払残業が行われることのないよう、本社レベル、事業場レベルを問わず企業全体としてチェック機能を発揮して主体的に賃金不払残業を解消するために努力するとともに、使用者が講ずる措置に積極的に協力することが求められる。

(4)労使の協力

 賃金不払残業の解消を図るための検討については、労使双方がよく話し合い、十分な理解と協力の下に、行われることが重要であり、こうした観点から、労使からなる委員会(企業内労使協議組織)を設置して、賃金不払残業の実態の把握、具体策の検討及び実施、具体策の改善へのフィードバックを行うなど、労使が協力して取り組む体制を整備することが望まれる。

3 労使が取り組むべき事項

(1)労働時間適正把握基準の遵守

 労働時間適正把握基準は、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき具体的措置等を明らかにしたものであり、使用者は賃金不払残業を起こすことのないようにするために、労働時間適正把握基準を遵守する必要がある。

 また、労働組合にあっても、使用者が適正に労働時間を把握するために労働者に対して労働時間適正把握基準の周知を行うことが重要である。

(2)職場風土の改革

 賃金不払残業の責任が使用者にあることは論を待たないが、賃金不払残業の背景には、職場の中に賃金不払残業が存在することはやむを得ないとの労使双方の意識(職場風土)が反映されている場合が多いという点に問題があると考えられることから、こうした土壌をなくしていくため、労使は、例えば、次に掲げるような取組を行うことが望ましい。

@ 経営トップ自らによる決意表明や社内巡視等による実態の把握
A 労使合意による賃金不払残業撲滅の宣言
B 企業内又は労働組合内での教育

(3)適正に労働時間の管理を行うためのシステムの整備

@ 適正に労働時間の管理を行うためのシステムの確立

 賃金不払残業が行われることのない職場を創るためには、職場において適正に労働時間を管理するシステムを確立し、定着させる必要がある。

 このため、まず、例えば、出退勤時刻や入退室時刻の記録、事業場内のコンピュータシステムヘの入力記録等、あるいは賃金不払残業の有無も含めた労働者の勤務状況に係る社内アンケートの実施等により賃金不払残業の実態を把握した上で、関係者が行うべき事項や手順等を具体的に示したマニュアルの作成等により、「労働時間適正把握基準」に従って労働時間を適正に把握するシステムを確立することが重要である。

 その際に、特に、始業及び終業時刻の確認及び記録は使用者自らの現認又はタイムカード、ICカード等の客観的な記録によることが原則であって、自己申告制によるのはやむを得ない場合に限られるものであることに留意する必要がある。

A 労働時間の管理のための制度等の見直しの検討

 必要に応じて、現行の労働時間の管理のための制度やその運用、さらには仕事の進め方も含めて見直すことについても検討することが望まれる。特に、賃金不払残業の存在を前提とする業務遂行が行われているような場合には、賃金不払残業の温床となっている業務体制や業務指示の在り方にまで踏み込んだ見直しを行うことも重要である。

 その際には、例えば、労使委員会において、労働者及び管理者からヒアリングを行うなどにより、業務指示と所定外労働のための予算額との関係を含めた勤務実態や問題点を具体的に把握することが有効と考えられる。

B 賃金不払残業の是正という観点を考慮した人事考課の実施

 賃金不払残業の是正という観点を考慮した人事考課の実施(賃金不払残業を行った労働者も、これを許した現場責任者も評価しない。)等により、適正な労働時間の管理を意識した人事労務管理を行うとともに、こうした人事労務管理を現場レベルでも徹底することも重要である。

(4)労働時間を適正に把握するための責任体制の明確化とチェック体制の整備

@ 労働時間を適正に把握し、賃金不払残業の解消を図るためには、各事業場ごとに労働時間の管理の責任者を明確にしておくことが必要である。特に、賃金不払残業が現に行われ、又は過去に行われていた事業場については、例えば、同じ指揮命令系統にない複数の者を労働時間の管理の責任者とすることにより牽制体制を確立して労働時間のダブルチェックを行うなど厳正に労働時間を把握できるような体制を確立することが望ましい。

 また、企業全体として、適正な労働時間の管理を遵守徹底させる責任者を選任することも重要である。

A 労働時間の管理とは別に、相談窓口を設置する等により賃金不払残業の実態を積極的に把握する体制を確立することが重要である。その際には、上司や人事労務管理担当者以外の者を相談窓口とする、あるいは企業トップが直接情報を把握できるような投書箱(目安箱)や専用電子メールアドレスを設けることなどが考えられる。

B 労働組合においても、相談窓口の設置等を行うとともに、賃金不払残業の実態を把握した場合には、労働組合としての必要な対応を行うことが望まれる。

 

過重労働による健康障害防止のための総合対策

2002年2月12日 厚生労働省

1 目的

 平成13年12月12日付け基発第1063号「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するもめを除く。)の認定基準について」(以下「新認定基準」という。)により、脳・心臓疾患の労災認定基準を改正し、業務災害の認定に当たって、疲労の蓄積をもたらす長期間の過重業務も、業務による明らかな過重負荷として新たに考慮することとしたところである。

 この新認定基準においては、長期間の過重性の有無の判断に当たって疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられる労働時間と脳・心臓疾患の発症との関連性について示したところである。

 本総合対策は、新認定基準の考え方の基礎となった医学的知見を踏まえ、過重労働による脳・心臓疾患の発症の防止に関して、別添のとおり「過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置等」を定め、その周知徹底を図ることにより、過重労働による健康障害を防止することを目的とする。

2 過重労働による健康障害防止のための周知啓発

 都道府県労働局及び労働基準監督署は、集団指導等のあらゆる機会を通じて、リーフレット等を活用しつつ別添の内容を広く周知を図ることとする。

 この周知に当たっては、関係事業者団体等並びに産業保健推進センター及び地域産業保健センター等も活用することとし、事業者に対して広く周知する。

 また、平成14年度中に作成し、インターネット上で公開することとしている労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリストを広く周知することとする。

3 過重労働による健康障害防止のための窓口指導等

(1)36協定における時間外労働の限度時間に係る指導の徹底

ア 労働基準法第36条に基づく協定(以下「36協定」という。)の届出に際しては、労働基準監督署の窓口において、「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」(平成10年労働省告示第154号)(以下「限度基準」という。)を超える36協定を事業者が届け出た場合については、限度基準を遵守するよう指導する。

 また、36協定において、限度基準第3条ただし書に定める「特別の事情」が生じた場合に限度時間を超える一定の時間まで労働時間を延長することができる旨を定めたものについては、過重労働による健康障害を防止する観点から、当該時問をできる限り最小限のものとするよう指導する。

イ 36協定において、月45時間を超える時間外労働(1週間当たり40時間を超えて行わせる労働をいう。以下同じ。)を行わせることが可能である場合であっても、実際の時間外労働については月45時間以下とするよう指導する。

(2)労働者の健康管理に係る周知指導

 (1)の月45時間を超える時間外労働を行わせることが可能である36協定を受け付ける場合及び裁量労働制に係る届出を受け付ける場合については、リーフレット等を活用して別添の内容を周知指導する。

4 過重労働による健康障害防止のための監督指導等

(1)月45時間を超える時間外労働が行われているおそれがあると考えられる事業場に対しては監督指導、集団指導等を実施する。

(2)監督指導においては、次のとおり指導する。

ア 月45時間を超える時間外労働が認められた場合については、別添の4の(2)のアの措置を講ずるよう指導する。併せて、過重労働による健康障害防止の観点から、時間外労働の削減等について指導を行う。

イ 月100時間を超える時間外労働が認められた場合又は2か月間ないし6か月間の1か月平均の時間外労働が80時間を超えると認められた場合については、上記アの指導に加え、別添の4の(2)のイの措置を速やかに講ずるよう指導する。

ウ 限度基準に適合していない36協定がある場合であって、労働者代表からも事情を聴取した結果、限度基準等に適合していないことに関する労使当事者間の検討が十分尽くされていないと認められたとき等については、協定締結当事者に対しても必要な指導を行う。

(3)事業者が上記(2)のイによる別添の4の(2)のイの措置に係る指導に従わない場合については、当該措置の対象となる労働者に関する作業環境、労働時間、深夜業の回数及び時間数、過去の健康診断の結果等を提出させ、これらに基づき労働衛生指導医の意見を聴くこととし、そめ意見に基づき、労働安全衛生法第66条第4項に基づく臨時の健康診断の実施を指示することを含め、厳正な指導を行う。

5 過重労働による業務上の疾病が発生した場合の再発防止対策等

(1)過重労働による業務上の疾病を発生させた事業場に対する再発防止の徹底の指導
 過重労働による業務上の疾病を発生させた事業場については、別添の4の(2)のウの措置を行うよう指導する。

(2)司法処分を含めた厳正な対処

 過重労働による業務上の疾病を発生させた事業場であって労働基準関係法令違反が認められるものについては、司法処分を含めて厳正に対処する。